技術士試験体験記〜受験動機編

技術士については既に何度か書いているが、これから何回かに分けて技術士第二次試験(情報工学)について整理しておくことにする。私も受験時にはネット上で情報を探し求めたもの、出回っている情報があまりに少ないため苦労した記憶がある。マイナー極まりない国家資格であるが、技術者の社会的地位向上のために資格を持つ人がもっと増えて欲しいと思っている。技術士受験の生の声を求める方のお役に立てば幸いである。

まず、今回は受験動機について。業界や業務によっては技術士資格が必要不可欠になっているところもあるようだが、私の仕事(ソフトウェア開発)ではこんな資格は一切関係ない。官公庁向けの業務をしているわけでもないので会社の売上げが増えるわけでもないし、社内に技術士資格を持つ人も無く技術士との接点もゼロだし、会社での査定にも一切関係しない。そのような状況の中、なぜ高い受験料を払ってまで受験しようと思ったのか?主な理由はこんなところだ。

  1. 会社を離れて、一人の技術者としてのスキルを評価したかった。
  2. 技術者としての実績を確認したかった。
  3. 技術者として最高の資格を持ちたかった。

まず、1について。成果主義などの評価方法が導入されてきたとは言え、会社での人事評価というものは所詮「上司に気に入られているか」とか「夜遅くまで残業しているか」など技術には関係しない点での査定が大きい。つまり「どんな優れた技術を持っているか」という点よりは「(技術なんかどうでも良いから)どのような成果を出したのか」という比重の方が大きいように思う。組織運営としてはこれで良いと思うけれど、技術者として生きていくためには当然のことながら自身の技術がどのようなレベルにあるのか?という点を知ることが重要なポイントになってくる。これからの時代、会社の存続はかなり怪しいと思うけど、そんな状況でも会社の外で通用するスキルを持っていることは強力な武器になるはずだ。

次に2について。会社の製品開発に関わる仕事をしている以上、会社の名前を勝手に出して「これは私が作りました」とは公言することはなかなか難しい。縁の下の力持ちとして最終的に製品が出荷されれば結果オーライで良いのだけど、開発時に行っている様々な技術的評価、検討、分析、設計、判断が本当に正しかったのか客観的な裏付けが欲しい気がする。学会への論文投稿や特許の出願も同じようなものだと思うが、技術士試験の経験論文もこのような実績の評価として最適ではないかと思う。自分の実績に対して専門家が「妥当なものですね」と評価してくれるわけだから、信頼度は高いはずだ。

最後に3について。名刺交換した相手方の肩書きに「○×」等と資格の名前が付いていることがあるけれど、仕事を進めていくと、その肩書き程の実力がないと分かってきてガッカリすることがある。素人相手の営業ならそんな肩書きで誤魔化せるけれど、こちらはソフトウェア開発のプロなのだ。話の中で技術に対する相手の理解度が分かって来てしまう。でも悲しいかな、資格というのは絶対的なモノだ。資格を持っていない人と持っている人を比較したら、持っている人の方の立場が強い。「なんだかんだ言っても資格を持っているではないか」と言われたらお終いである。仕事を進めていく上で、相手と対等以上の立場に立って話を進めるためには資格は極めて有利な材料となり得るのだ。

結局のところ、会社の中で従順に働くだけなら技術士資格なんて必要なかったように思う。私の場合、会社だけの人生なんてつまらない、会社を離れて一個人としての立場を求めたい、という欲求が大きかったように思っている。なお、上記の受験理由はかなり個人的なものであり、面接試験ではもう少し建前上の「立派な理由」を面接官にアピールしなければならない。これについては別途改めて記載したい。

技術士」は技術士法という法律にもとづいて行われる国家試験の合格者に与えられる資格で,業務独占(国家試験の合格者だけが特定の業務を行える。医師,弁護士など)こそないが,名称独占が認められている。この試験に合格しなければ,「技術士」と名乗ってはいけないのだ。日本技術士技術士試験センターの渥美純一試験部次長は,「学問の最高峰が博士,技術者の最高峰が技術士」であるという。

【IT業界の資格指南】第3回 技術士試験(上) | 日経 xTECH(クロステック)

2009/2/24追記

上記のリンク先に載っている情報は以前の制度のものです。現在の第二次試験の内容については下記を参照して下さい。