経験を積めばスキルが上がるという幻想

組織の中では経験を積んだベテランから、キャリアを積み始めたばかりの新人まで幅広い人材がいて、そのスキルの差があるのは当然のことなのだけど、一方で似たような開発経験を積んで来ているはずなのに、そのスキルの差が大きく開いてしまっているケースもある。同じ社内で同じような形で仕事を進めているのだから、同じ程度のスキルが身について良さそうなものだど、必ずしもそうならないのは何故だろう?

単に経験を積むだけなら誰にでも出来ることなのだけど、実はそこから何を得るか、或いは何が得られなかったので自分はどうすべきなのか、と言った教訓を自分で考えられる人はあまり多くない。その差がスキルレベルの違いを生み出す一因なのかも知れない。経験に密接に結びついたことを学ぶなら習得しやすいし、理解も容易のはずだ。優秀な開発者は目の前の仕事を片付ける一方で、そこから得られた教訓を未来の自分のためにフィードバックしているようだ。

経験をつむことはもちろん大切な事なのだけど、それをどう生かしていくかという点は、各個人に委ねられている。忘年会のよた話の1つに昔の失敗談を自慢気に話す上司を見たら、その仕事ぶりを思い出してみると良い。同じような失敗を懲りずに延々と繰り返しているのなら、それは経験から何も学べなかったという証拠に他ならないし、そのスキルや能力に疑問符が付くのは必然とも言える。

経験値を積み重ねているから大丈夫だと安心してはいけない。会社は経験を積む場を提供してくれるかも知れないが、そこから習得できるスキルは限られたものに過ぎないし、会社の側にとって都合の良いものばかりなのだ。得られた経験を生かして、より深く汎用的でつぶしの効く高度なスキルを磨いて行くのは開発者個人の責任だと思っている。