学ぶ方法をどうやって学ぶか?
その昔、社会人になって間もない頃、会社で机に向かってビジネス誌を読んでいる人がいた。自己啓発のためか、その雑誌を読むことがビジネスマンの常識なのかと思いつつ、なぜその雑誌を読むのか目的を聞いてみたところ、こんな答えが返ってきた。
この会社にいるとバカになる一方だから、バカにならないために読んでいる。
世間知らずだった当時は、そんな回答が返ってくるなんて想定外だったのでビックリ仰天したけれど、その言わんとしていることを実感できたのはずっと後になってからのことだった。もちろん、その時にはもう彼は会社を辞めており、社内に残っていたのはそんなビジネス誌なんか読まず、世間の動向にも疎い人たちばかりだったように思う。
考えて見れば、会社の仕事を続けていく上で何が必要であり、その知識はどのように学ぶべきなのか、と言った点については誰からもはっきり教わったことは無い感じがする。周りの人の様子を観察しながら、手探り状態で技術書や雑誌を読みつつ、セミナーに参加するなどの形を取って、自分なりのスタイルを徐々に固めていったと記憶している。今の時代なら、もっと手っ取り早く確実な方法がいろいろ存在するのだろう。
自分が読むのと同じような技術書を読んでいる人と知り合えると、「あの本は良かった」「この本は参考になる」と互いに有益な情報交換が出来るので幸せな気持ちになれる。勉強するということは、そんな人と知り合って自分自身の知見をより高めていくための一つの方策なのかも知れない。勉強しなくても仕事は続けられるし生活していくことも十分に可能だ。でも、そんな環境に留まることに対して危機感を抱いたり、より充実した人生を送りたい思うのなら、勉強というのは悪くない投資だろう。
本来なら、そのような「勉強の仕方」や「生涯学習を続ける姿勢」こそを学校で教えるべきなのではないかと思うのだが、残念ながら今も昔も学校でそのような考え方は教えてくれないようだ。20歳前後の学生に知識を教えて社会に送り出せば充分と思われている限り、社会の現場にて何をどうやって学ぶべきなのか分からない人は増え続けることだろう。教育機関に求められる使命は昔と変わってきているのだから、それに応じた体制に作り変えることが求められているように思う。
下記のような記事を読んで、個人的には、社会人として5年、10年も働いてきて「勉強の仕方が分かりません」レベルでは困ると思うのだが、そもそも学校でそんなやり方を学んでいない以上、途方にくれる人が出てきてしまうのは仕方ないことかとも感じる。先行き不透明な時代であるからこそ、自分自身に何が必要であるかを見極めて、知識を確実に習得した上で生き延びていく逞しさが求められているように思っている。
将来のキャリアに不安を抱えているが、不安を解消するための具体的な行動をなかなか起こせない。勉強への意欲はあるものの、忙しい日々の中でどんな勉強をしたらいいのか分からない―― 情報処理推進機構(IPA)が4月20日に発表した「IT人材白書2011」概要から、 将来の道筋が見えずに行動しあぐねているエンジニアの姿が浮かび上がってきた。
技術者の半数「将来は不安、だが勉強はしない」――IPA調査:将来への不安は、勉強と行動によって解消せよ - @IT
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