SEA関西プロセス分科会「モデリングの本質」に参加した

昨日は第46回SEA関西プロセス分科会「モデリングの本質」に参加してきた。講師は「UMLモデリングの本質第二版」の著者として有名な児玉公信氏。著書はもちろん事前に読んでいたので、どのような興味深いトピックスが飛び出してくるのかと興味津々であり、同様な関心をもつ人は多いのか参加者も多かった。

講演は、エンタープライズ系のモデリングで経験を積んできた児玉氏が、組み込み系のモデリングの世界に入って気がついた事という点から始まり、簡単なモデリングの演習などを挟みつつ、モデリングの表現に存在する様々な問題が紹介されていた。

特に興味深いと感じたのは、エンタープライズ系と組み込み系ではモデリングの目的、利用方法が大きく異なる点だ。

現状をどう捉えるか?という問題提起から始まるエンタープライズ系に対し、既に存在するハードウェアをどのように動かすか?という方法論に重点を置くのが組み込み系の特徴なのだ。

演習ではETロボコンのロボットカー制御モデルの例に関して問題点を指摘するという問題が出たのだけど、エンタープライズ系の人たちの中には「そもそもモデルに記載されている内容が全く理解できない」という人もいたようだ。両方の分野を業務として取り組む人は少ないし、UMLの利用形態として全く別の世界観が存在するという事実が改めて浮き彫りになったようにも感じた。

単純なエレベータのシミュレータ程度ならハードウェアの各パーツと結びついた素朴なモデルでも充分に役立つものの、会場からの質問でも出たように、大規模な組み込み系の開発になるほど概念の理解や戦略の存在が求められるはずであり、そういった意味では組み込み系のモデリングエンタープライズ系のモデリングから学べる点が多々あるはずだろう。

そんな問題提起を踏まえつつ、後半の講演では、組み込み系モデルの一般化は出来ないか、情報システムのアーキテクチャを参考にできないか、バス中心型の動的モジュール構造の試み等の興味深いトピックスが続いたのだけど、大学のゼミのディスカッションを思わせる議論が多くて、自分としてはやや興味の対象を外れる内容だった。現在のモデリングの利用に課題があるのは事実で、それを改善するための方策を次世代のモデリングとして捉えるならば、今回の話に出てきたのは次々世代の内容とも言えるような気がする。今の開発現場に生かせるヒントを求めていた私のような参加者には、やや敷居が高い内容だったように思う。

なお、モデルに正解は無い、という主旨のコメントが話の中で度々出てきて、確かにそれはその通りで目的や観点によってモデリングの形が異なるのは当然だし、唯一無二の解を求めているわけではないのだけど、開発現場でそんな「正解は無い」と言う主張は通用しないし、答えの無いものを参照して使いものになるのか?という現場の反発を抑えこむことは難しいと思う。共通理解として当事者全員の合意が得られる程度のモデリングの「正解」は求める必要があると思っている。

今回の分科会では、最近「UMLモデリングの本質第二版」を出版された、児玉公信氏を講師にお招きして、モデリングの「心」と「実践」について縦横に語りつくしたいと思います。

第46回 SEA関西プロセス分科会のご案内-SEA関西



関連