マニュアル社会の行き着くところ

寒い寒いと手をこすりつつ、近所のファミレスに入った時のこと。ニコニコと愛想の良い店員さんは、メニューと一緒に氷の沢山入った水を持ってきた。真夏の暑い時に入ったのならともかく、真冬の寒い時期に入った店で冷たい水を有り難いと思う客は一体どの位いるのだろうか?少し考えてみれば分かるように、こんな時に嬉しいのは冷たい水ではなくて、温かいお茶だろう。その程度の想像力も無くて客商売が務まるのだろうか?

もっとも、そんな無責任なコメントが言えるのはこちらが商売の素人だからだろう。店の側から見れば、夏は氷水、冬はお茶と分けて出すようにしたらコストがかかるし、お茶を出したのに氷水に交換を要求する我がままなお客もいるだろうし(たぶんワタシ)、中間の春と秋の季節には一体どちらを出した方が適切なのか?といった問題が次々と出てくるのだ。

たぶん、その辺の厄介な問題を考えないようにするために「いついかなる時にも氷を小カップ一杯入れた水を出すこと」なるマニュアルが存在するのだろう。これなら全国何処の店でも常に誰に対してでも均一なサービスが提供できるし、クレームが出る心配もない。特に要望が出たのなら、そこで初めてお茶を準備すれば良いだけの話だ。万事OK、マニュアル万歳。

でもね、と冷たい水の入ったコップを目の前にして、客の一人は考える。マニュアルに従うことが仕事だと思い込むのはプロの仕事として如何なものかと思うし、マニュアルの指示通りに働く限り、他人との差別化は出来ずに安くこき使われるだけなのだ。サービスの基礎を学ぶ上でマニュアルは便利なものだけど、さらに一歩進んだ形で付加価値を生み出そうとしたら、その便利なマニュアルは捨て去るべきものではないかと思っている。

しかし、ザッポスでは、1件の電話に何時間かけても構わない。それより、お客様が「WOW!」と言ってくれるほど満足することが大切なのだ。トニーは『ザッポス伝説』のなかで、誇らしげに「これまでの最長時間は約六時間でした!」と書いている。

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