仕事の9割は面白くない

仕事というものは基本的に面白くないものだ。若い頃なら上司から言われた作業を延々とやらなければならないし、少し偉くなると部下と上司との間の調整に気配りしなければならないし、さらに偉くなって部下をたくさん持つと管理の書類をやたらと作る必要が有ったりして、つまらない業務からは決して逃れることが出来ない。個人で自分勝手に働くのなら別かも知れないと思って、独立して働いている知人に尋ねてみたら、税金の計算やら管理業務に忙しくて本業に割く時間が減るばかりだとぼやいていた。

やり甲斐を感じつつ熱意を持って仕事に励むというのは一種の幻想であって、仕事の基本というものはつまらない作業の繰り返しではないかと思う。こんな仕事が誰の役に立つのか、誰も読みもしない資料を作ることに何の意義があるのか、と思うことは甚だ当然であり、そのような疑問を抱くこと自体、真っ当な思考力を持ち合わせている証拠ではないかとさえ思う。(何も疑問に思わないのなら、それはそれで心配だ)

それなら個人の創意工夫や改善は一体どこで発揮すべきなのか?ということになるのだが、基本的に仕事の9割はつまらない作業だから、そんな所に創造性が生きる余地は無い。つまり、残りの1割こそ前向きの力を注ぐべきだと思う。変な言い方かも知れないけど、僅か1割を相手に最大の創造力を発揮するためにこそ、9割のつまらない作業を片付けるべきなのだ。だから、つまらない仕事に対して不平不満をこぼすのは時間の無駄であって、むしろそんな仕事は期限内に手っ取り早く機械的に片付けてしまい、残りの部分に注力するのがコツなのだ。

なお、つまらない9割の仕事なんか要らないから、残りの1割だけに注力したい、と思うのが人間の常なのだが、残念ながらそれも上手くいかない。9割の仕事を片付けるからこそ、問題の本質が分かるものだし、残りの1割に取り組むチャンスが得られるのだと思う。何も成果を生み出せいない人がいきなり打席に立たせてもらえるわけ無いし、ホームランなんか打てるわけがない。まずは9割の仕事を無難に片付けて周囲の信頼を得ると同時に自分自身の知識を蓄え、残り1割での成果を最大限にするため、徹底的に知恵を絞るのが賢い仕事のやり方ではないかと思っている。