仕様書の文章を鍛える本「日本語の作文技術」
ソフトウェア開発の現場では、仕様書、報告書、企画書、提案書、障害レポートなど実務的な文章を書く機会が多い。実用一点張りの文章でも良いから、読み手にとって分かりやすく、誤解を生じさせることなく、必要最低限の書き方で意図が確実に伝わって欲しい。そんな文章技術を学ぶのにお勧めなのが、本多勝一著「日本語の作文技術」だ。
文章の書き方を指南する本には、よく「見た通りに書きましょう」とか「思いのままに書きましょう」と言った感覚を重視するタイプがあるけれど、新聞記事やルポルタージュで鍛え抜かれた本多勝一氏の文章術は、そんな非論理的な書き方をバッサリ切り捨て、如何に論理的な文章を書き貫くか?という方向に重点を置いている。小説やエッセイでは必要かも知れない言葉の感性も、実務的な文章では必要とされない要素なのだ。
例えば、修飾語の語順は何を基準に決めるべきか?的確な場所に句読点を打つ規則は何なのか?と言った「合理的な文章の書き方」について様々な文章の例を挙げて、もっとも適切な文章構築ルールを導き出している。そのルールに従って文章を書くのなら、(文学賞は取れないかも知れないけど)誰にでも理解出来る分かりやすい文章が書けるようになるはずだ。
文章の書き方なんて学生時代の作文や論文程度しか習っていないけれど、この本で解説されているような論理性を学んだ記憶はほとんど無い。分かりやすい文章の書き方が、これほどまで明快に、しかも合理的な理由と共に存在しているなんて、本多勝一氏の本を読んで初めて知ったように思う。小説のような名文は不要、仕事で使うからとにかく的確に内容が伝われば良いと言う実用性重視の人は、読んでおいて損しない本だ。
私たちは日本人だから日本語の作文も出来ると考えやすく、とくに勉強する必要がないと思いがちである。しかしすでに先の実例でもわかる通り、書くことによって意思の疎通をはかるためには、そのための技術を習得しなければならない。決して「話すように」「見た通りに」書くわけにいかない。イギリス語の作文でコンマをどこに打つかを考えると全く同様に、日本語作文では読点をどこにうつべきかを考えなければならない。
- 作者: 本多勝一
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 1982/01/14
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