技術を知っているという思い込みが怖い

ソフトウェアの開発現場には様々な人がいて、コードをガンガン書き続ける開発者がいる一方で、協力会社向けの仕様書を書き続ける人や、ひたすら打ち合わせを続けて「仕様調整」「工程管理」「障害対策」に励む人もいる。毎年新入社員が入ってくると聞かれるFAQの一つに「ソースコードを書かない開発者は一体何をしているのか?」というものが有るけれど、そんな開発現場の実態も学校の授業ではなかなか教えてくれないことなのだろう。

実際のところ「開発部門に所属しながらソースコードを書いたことがない(書けない)」人も全然珍しくなくて、開発のスキルと管理のスキルは異なったりするから、それはそれで業務分担として構わないのものの、厄介なのはそのような人に限って「自分は技術を分かっていると心の底から信じ込んでいる」点だと思う。

日々、ソースコードを相手に格闘している開発者だと、そもそも「ある環境(プラットフォーム、仕組み)で実現できること・出来ないこと」を明確に理解しているし、「自分では作ったことがないけれど、他で実現している例があるから、あの辺の技術を使えば作れるはずだ」という推理力を持っているのが普通だ。

それに対して技術の本質を理解せぬまま表層的な把握しか出来ていない開発者は、なんせ判断根拠となる知識に乏しいので、時々トンデモナイ発言をしてくる。

  • これ位なら簡単に対応できるはずだ。
  • この程度の機能なら簡単に作れるはずだ。
  • こんな問題ならすぐに直せるはずだ

本人は分かったつもりになっているから自信満々らしいが、そのような空虚な発言が出る度に「この人は技術を全然分かっていない」という冷ややかな空気が他の開発者の間に漂う。自分は全てを知っているから、或いは自分はあなたと対等レベルの知識を持っているからと、思い上がった発言をするから墓穴を掘る事態に繋がるように思う。

知人の或る開発者は「技術を理解してない開発者が出してくる要求は話にならない」と吐き捨てていたが、その気持ちは分かる気がする。見栄を張らずにもう少し謙虚に、知らないものは知らない、教わるべき点は他人から教わるという姿勢が必要ではないかと思っている。

良い悪いは別にして、誰しも能力に差はあります。持って生まれたものもあれば経験値が左右する種類のものもあります。それを自分を基準に考えるとどうしてもイライラしたり強く当たったりするわけですが、それでは組織運用は出来ない。そんなの当たり前でしょ?というのは尤もな話。基本中の基本ではあります。でも、その基本に忠実に行動するというのは中々難しいものでもあります。

これくらいできるでしょ?という思い込み:THE SHOW MUST GO ON:オルタナティブ・ブログ



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