忘れるためのメモ

メモを取ると言うと「情報を忘れないようにするため」の行為と思いがちで、確かにそれはそうなのだけど、個人的には同時に「情報を忘れるため」の行為であるとも思っている。

パソコンを仕事に使い、次から次へとメールが飛んで来る状況の中で仕事を進めていると、あれこれ異なるタスクを同時進行で管理しなければならないことが多い。例えば、こんな感じだ。

  • 上司から依頼されたレポートを明日までに提出する。(重要だ)
  • チームの作業進捗を逐次チェックする。(繰り返しが必要)
  • アプリケーションをバージョンアップして良いか動作検証する。(時間がかかる)
  • 次期開発案件のプロトタイプ案を練る。(急がないけど必須)

優先度、納期、作業期間、必要な作業量等が全て異なるタスクを全て覚えておくのは不可能だし、その状況は日々刻々と変わっていくので、常に最新情報に追従していくことは不可能に近い。そんなわけで、やるべきタスクを記憶するという無謀な努力は、かなり昔に放棄してしまった気がする。

その代わりとして、記憶を補助するためのツール類は積極的に使うようにしている。

  • ポスト・イットを常に持ち歩き、直ぐにメモを取れるようにしておく。但し、紙のメモは直ぐに無くしてしまうので、出来るだけ早くパソコンに入力する。
  • Dropbox内にToDoリストのようなテキストファイルを作ってメモを記載する。これならパソコンが変わっても、或いはiPhoneでも常に同じ内容にアクセスできる。
  • 仕事の案件についてはTracのチケットに記載する。結果だけではなく内容や履歴についても記載しておくと、後で振り返った時に役立つことが多い。

経験的に言うと、情報があちこちに分散してしまうと分からなくなってしまうので、ある程度のポイントに集約しておき、しかも、いつでも何処からでもアクセスできる形態が望ましいようだ。

メールの受信箱と同じで、自分の頭の中はいつも空っぽのクリーンな状況にしておきたい。メモのような外部のリソースで済ませられるものは有効活用すべきだろう。本当に頭を使って考えるべきなのは、そのメモの内容の方なのだから。

今朝の日経「交遊抄」で作家の 中野不二男氏が紹介されている梅棹忠夫の言葉。昔オーストラリアでのフィールド調査の際、梅棹忠夫は埃だらけになる毎日の調査の終えた後、夕食前に粗末な プレハブ兵舎の中でもくもくと「京大式カード」にメモを書いていたとのこと。

「人間、そんなに覚えられません。忘れるためにメモをとるんです」(梅棹忠夫)



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