かみ合わぬ議論

ソフトウェア開発の現役を退いた方々と会談。当然のことながら、作る対象も技術も時代と共に変わっているので、話はなかなか噛み合わない。

  • 「ソフトウェアの全体構造を理解しろ」
    全体のコード量は百万行を軽く超えます。こんなソフトの動作や仕様を全て理解するなんて不可能ですし、理解している人なんていません。トライするのなら止めませんけど、開発期間は短くなる一方なのでチャレンジする暇な人はいません。
  • 「技術伝承できていないぞ」
    そう指摘するのなら自分で講師を務めて若手向けに講義をお願いします。講義の場は幾らでも設けます。若手が飛びつく題材なら良いのですけど、昔の自慢話が出てくるようでは誰も聞かないでしょう。
  • フローチャートを書け」
    今はUMLの時代なので、フローチャートなんて誰も書かないです。UMLモデリングしてモデル駆動開発ツールに渡せば、実動作するソースコードは幾らでも吐き出せます。ところでモデリングってご存じですよね?
  • 「若い頃は徹夜で仕事をしたものだ」
    そんなデスマーチを繰り返すから優秀な人材はソフトウェア開発の現場からいなくなってしまったのです。今時徹夜するのは、残業代の積み増しが目当てか、査定を上げるためのごますりが目的でしょう。
  • 「外注に出すから技術力が落ちるのだ」
    開発コスト削減と称して協力会社の利用を推し進めたのはあなた方自身ではないですか?数に頼る開発は人件費の安いオフショアへ流れてしまいました。日本国内の失業率を悪化させた一因でしょうね。

古き良き時代は、そんな開発だったのだろうなと思わせる発言が随所にあり、歴史を知る上でこれはこれで勉強になる。しかし、現在のソフトウェア開発の実状にあまりに疎く、現役時代に使った自分の技術が今でも通用すると頑なに思い込んでいるところが怖い。いつの時代も変わらないものもあるし、その一方で時の流れと共に激しく変化するものもある。その違いが存在することに注意しなければならないと思う。

そのベテラン技術者はずっとテキストエディタでの仕事が中心で、コーディングシートも書かず、机上デバッグをしないプロジェクトは考えられなかったのです。私が行っていた、IDEで動かしながらデバッグする手法は「若造の暴走」とさえ思われていました。

ベテランならホントに安心なのか? (2/3) - ITmedia エンタープライズ