失われゆくノウハウ

ノウハウとはどんなもの?」というエントリを読んで、改めてノウハウについて考えてみた。例えば、ソフトウェア開発という仕事の中で、自分の書いたソースコードがどんなバグを出し、その原因は何であり、どうすれば再発を防げるのか、と言ったことを昔からチマチマと書き連ねてきた。蓄積も多く役に立ったと覚えているノウハウも数知れないが、その一方で時代遅れになってしまった情報も少なくない。例えば10年前のメモには、MacOS8向けのAPIの使いこなし方やら、Visual StudioMFCを使う際のコツなどが記載されているが、前者はCocoaの時代になって価値が無くなってしまったし、後者も.NETが開発のメインになりつつあるので、存在意義はかなり小さくなってしまった。

こうして振り返ってみると、ノウハウが旬である時期というのは実はかなり短い気がする。特にソフトウェア技術など、技術のトレンドが激しく入れ替わるので一層短く感じられるのだろう。メモリリークを防ぐためのコツなど、未だに現役のノウハウとして利用できるものも存在するが、これはかなり幸運な部類に入るかも知れない。皮肉にも今日の現場で役立つノウハウは、1ヶ月後には既に時代遅れだったりする。

こんな状況の中、ノウハウを共有化して効果的に使うためには、組織的に分担して情報を集める、情報そのものより情報が集まっている処を探す、という戦略が必要かも知れない。何せ相手は生ものなのだ。賞味期限が有効なうちに情報を集めて活用する必要がある。実は普遍的に一番役立つのは「ノウハウを効果的に集めて活用するためのノウハウ」、すなわち「ノウハウのノウハウ」(メタ・ノウハウ)のような気もする。これさえ有れば、分野や時代を問わず知識を有効活用できるはずだ。でも、残念ながら、今日抱えているバグの解決には直結しないところが欠点だな。