昭和的価値観

今年も研修を終えた新入社員が配属されてきた。初々しい若手社員も早く仕事を覚えて一人前の技術者になって欲しい。あまり楽ではない部署ではあるけれど、会社やお客さん、そして世の中のために頑張って欲しいものだ。せっかくの機会なので、先輩技術者としてアドバイスをしよう、なんて言い出すと年寄り扱いされるので何も言わない事にする。自分の人生なのだから、そんな事は自分で考えましょうね。

今になって思い出してみれば、新入社員の私を辛抱強く使ってくれた当時の上司は偉い人だと思う。チームの戦力からは程遠い若造を我慢強く指導して、一人前の技術者に育ててくれたのだから、この人には頭が上がらない。他のチームに入った同期は、新人という事で長いこと雑用をやらされたり、希望していない業務を分担させられたりしていたけれど、この上司は早い時期から私に普通の仕事を割り当ててくれたし、失敗した時にも管理者としてカバーに回ってくれた。自分で言うのも何だが、優れた上司に巡り会えて幸運だったと思う。当時の上司の姿を見習いつつ、私も若手を指導していきたいものだ。とは言うものの「若者はなぜ3年で辞めるのか?」といった本を読むと、最近の若手もいろいろ思うところがあるようで、さっさと辞めてしまう人が少なくないようだ。せっかく入ったのに勿体ないという気がするけれど、これも私が古き時代の価値観に染まっているせいなのかも知れない。

しかし、老婆心ながら一つだけ言うと、今の若い人は会社に対して少々過大な期待をし過ぎているようにも感じられてしまう。個人的には、所詮会社とか組織というものはそんなものであって、使命感に燃えて働くところではないような気がする(そんな意識で働ける人はもちろん問題ないけれど)。言ってみれば「会社から自分が得られるモノ」が「自分から会社へ提供するモノ」より大きいからこそ働く意義があるのであって、逆なら働く価値は無いのだ。自分が損して働くことほど、意味のない事は無いだろう。そんな理解をしていると、大企業や官公庁、ベンチャー企業なんていう分類はあまり意味を成さないことに気づく。テレビのコマーシャルに出てこない会社なんて沢山あるし、自分には足りない「何か」を与えてくれる会社だって幾らでもあるのだ。そんな自分に合った居場所を見つけられる人が、実は成長の度合いが大きくて最後には勝つのかも知れない。

若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来 (光文社新書)

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