リスク回避型開発の行き着くところ

開発の現場には様々なリスクが存在するから、それらに考慮した方策を取ることが必要になる。

  • まずはプロトタイプを作ってみて、本開発前に技術的課題を洗い出す。
  • 難易度の高い部分から着手して、問題発生時の検討時間を確保しておく。
  • 後工程での影響度が大きい箇所からレビューを行い、手戻り工数を減らす。

システム開発やプロジェクト管理の本にはよく書かれている内容だし、少し経験を積んだ鋭い感覚の開発者なら、リスクの潜む箇所を見通すことは実はそれほど難しくなかったりする。不確定要素の多い開発でも「いつ作業が終わるのか分かりません」「やってみないと分かりません」なんて無責任なことを言っているようでは、プロの仕事とは言えまい。リスクを見据えて先手を打ち、少しでも不確定要素を抑えこむのがスキルというものだろう。

ところが、最近の開発現場では、そんな開発の面倒事を最初から放棄してしまい、人材や開発そのものをリスクとして捉える風潮があるようだ。例えば、こんな事例は良くあるものだろう。

  • 自社で人材を抱えると景気後退時のお荷物となりかねないから、派遣会社から開発者を集めよう。
  • 自分たちで開発すると問題が起きた時の責任を取れないから、社外の協力会社に一任しよう。
  • 新しい技術を使うと問題発生時に困るから、何度も使った古い技術を今回も使おう。

こんな状況を見る度に、この自称「開発会社」「開発者」という人たちは一体何を作っているのだろうかと思ってしまう。時代を切り開く新技術も無く、開発者を育てるスキルもなく、単に人を集めて指示を下すだけの仕切り屋状態になってしまっているのに、それこそが開発の仕事だと思い込んでいるところが恐ろしい。

本来、人を育てるのが組織の役割のはずだし、他社には無い技術を開発することが会社としての使命のはずだ。面倒くさいから、時間がかかるからといった理由で手間暇のかかる作業を放棄し、長期的戦略も無いままに目先の利益だけを優先する会社に未来はないのではないかと思っている。

他社と横並びでスペック競争をする時代は終わった。総合家電メーカーというビジネスモデルはもう成り立たない。ハードウェアは自分たちで作り,ソフトウェアの開発は外注に丸投げするのでは世界で戦えるデバイスは作れない

第11回 Appleのビジョンと日本のハードウェアメーカーの将来:Software is Beautiful|gihyo.jp … 技術評論社