中国へ流れる技術者

昨日(2010/11/13)、中国に渡る技術者の姿を描く番組が放映されていた。国内家電メーカーの人員削減により退職を余儀なくされた技術者が中国メーカーに仕事を求めるのだが、中国の会社側も数年前とは一転して日本人技術者なら誰でも歓迎というわけではなく、採用する人を厳しく選別しているらしい。世界の市場にて着実に力を付けつつある中国メーカーの力を再認識させられる内容だ。

番組では、技術者を紹介する業者の人材名簿も説明され、そのランク付けはなかなか厳しいものだった。採用は特定分野の専門家に対象を絞っており、あちこちの事業分野で数年ずつ経験を積んだ中途半端なキャリアしかない技術者は価値が無いとか。

  • Sクラス:大学院修了、経験20年以上(採用)
  • A+クラス:大学卒、経験20年以上(ほぼ採用)
  • Aクラス:大学卒、経験10年以上(採用率3割程度)

中国メーカーで働く日本人技術者のインタビューも紹介されており、日本を捨てて中国メーカーで働くことについて葛藤がないのか?という趣旨のいかにも日本的な質問に対して、かなりあっさりと未練はありませんと答えていたのが印象的だった。同じ環境が日本と中国の双方に存在するのなら日本企業を選ぶはずだけど、なんせ日本に仕事の場は無いのだ。それなら少しでも仕事の可能性がある中国を目指すのはやむを得ないとも思える。

また、技術者が納得出来るような理由付けが有れば、人員削減でも大きな問題はあまり起こらないはずだと思うのだけど、(経験した人なら分かるように)リストラ現場は壮絶だ。リストラでの退職を引き金に会社への恨みを抱くようになり、自分自身の食い扶持を稼ぐために「長年培った技術・ビジネス上のノウハウ」を他国の企業に易々と渡してしまう技術者を責めることは出来ないように思う。

一体何人くらいの人が中国に渡っているのか知らないけれど、もうこの流れは止められないはずだ。現役の技術者は是非とも実情を知っておいた方が良い。業界、分野は異なっても、将来の自分の姿がここに有るかも知れないからだ。

一方、日本の各電機メーカーは円高による業績悪化を受けリストラを加速。去年から今年にかけ十数社であわせて1万人もの社員が退職を余儀なくされた。大手電機メーカーでプラズマテレビの企画をしていたある技術者は、「採算が合わない」と部門を廃止されたことをきっかけに早期退職。中国への転職を希望した。
しかし、そこに意外な壁が立ちはだかった。日本人の引き抜きで技術力がついた中国企業では「トップレベルの技術者以外は要らない」というのだ。

http://www.nhk.or.jp/tsuiseki/file/list/101113.html



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