成功事例を可視化できないか?

ソフトウェア開発の実体はなかなか見えにくい。部外者からの「あいつら何をやっているのか?」という冷たい視線を感じることもあるし、隣の開発者の作業内容すら理解していないことも多い。仕様書の山やソースコードリポジトリを参照すればそれなりに成果物は見えてくるのだけど、それが全てというわけでもないし、そもそもその中に障害が含まれていたりするのでややこしい。だからtrac等を使ってプロジェクトの見える化を図ったり、不具合成長曲線を描いてゴールまでの距離感を掴んだりするわけだ。確かに内容が幾分見えるようになり、これはこれで分かりやすい。

しかし、このような形で表れてくるのは障害という「負の成果」ばかりなのだ。ソフトウェア開発にバグはつきものとは言え、そんなものばかり列挙されて楽しいかと言われると、実はあまり楽しくないような気がする。発生件数が少なければ嬉しいけれど、それでもネガティブな要素であることに変わりはない。ゲームの得点のように「正の成果」を並べて、これぞソフトウェア開発の成果です、と胸を張って誇れる仕組みは無いものだろうか?

もちろん、チケット駆動開発やバーンダウンチャートのように想定通りの作業項目は列挙出来るけど、これを成功事例と呼ぶには少々抵抗があるし、所詮「片付けて当たり前」というタスクに過ぎないような気がする。JUnitのように単体テストの結果をグラフィカルに表示すると言うのも、開発者レベルでは満足出来るものだし悪くは無いけど、あくまでもコードレベルの結果なので、例えば「要求の不理解」「仕様の問題」まではカバー出来ない。

プロジェクトが完了して無事にカットオーバー出来ればOK、製品としてお客さんに買ってもらえればOKという「結果オーライ」の評価しかない現状を見る度に、「これぞ成功プロジェクトです」と断言出来ない状況を歯がゆく思う。開発プロジェクトにおいて、幾つもの工夫を行ってきたはずだし、前回のプロジェクトでの反省も生かされているはずだ。プロジェクトを成功へ導くためのそんな積み重ねが、「納期通りにリリース出来れば失敗ではない」という結果論の中に消え失せているような気がしてならない。開発プロジェクトをプラスの方向で評価するための仕組みが存在するのなら、開発者のモチベーションや開発現場のやる気はもっと向上するのではないかと思う。



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