技術の習得には時間がかかる

書店に行くと様々な英会話の書籍が並んでいる。本を読むだけで語学を習得できるのなら、誰でもペラペラに英語を話せてしまうはずだが、もちろんそんなことは不可能だ。本を読んでもなかなか習得出来ないのが当たり前だし、自分で思い通りに使えるようになるには学習を積み重ね、時間と手間を掛けてスキルを磨いていく必要がある。得手不得手とか個人の好き嫌いも絡むから、習得出来るレベルとか内容に差が出てしまうのは当然だし、中にはマスター出来なくて挫折してしまう人もいることだろう。残念な結果かも知れないけれど、それはそれで仕方ない事かも知れない。

それでは、ソフトウェア開発の技術はどうなのだろか?世の中には実に様々なソフトウェア開発手法が存在するので、少し手間をかけるだけで様々な情報を集められる。

  • ○×という開発手法が流行っている
  • △□というフレームワークの評判が良い
  • ▽という開発ツールが広く使われている

英会話と同じで、当然のことながら本を読んだりセミナーを受けただけではスキルは身につかない。それらの情報を時間を掛けて学んだ上で、開発現場の実践に持ち込む必要がある。正しく使いこなせるようになるには練習が必要だし、自分たちの開発スタイルに合わせた形で吸収するにはある程度の試行錯誤が必要だ。技術の習得には時間がかかるものなので、例えば「来週からの開発に必要だから今週中にマスターしておいて」などと気軽に言える性質のものではないはずだ。

しかしながら、開発の現場に携わっていると、そんな技術の特性を軽視して極めて短絡的な発想をする人が多いことに驚かされる。

  • 足りない知識があるのなら、セミナーへ行って学べば直ぐに使えるはずだ
  • 技術なんて直ぐに理解して実践出来るはずだ
  • ネットで調べれば直ぐに分かるのだから、今日から使えばよい

そんな簡単に学べるものではないことを分かっていないのは、どうしてなのだろう?英語は簡単に学べないけれど、技術は容易に学べるものだと思っているのだろうか?あるいは、英語など何ら苦労することなく習得出来てしまったので、技術も同じように学べると思っているのだろうか?技術なんて簡単なものだから、誰でも直ぐ同じように習得できて当たり前だと思っているのだろうか?いろいろ想像してみたけれど腑に落ちないことが多いように思う。最も可能性が高いのは「そもそもそのような発言をする人自身が技術を持っていないし、学んだ経験も無い。だから技術の習得という概念そのものや、習得に手間暇がかかるという現実を理解出来ていない」ではないかと思っているのだけど、さてどうなのだろうか?



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