飛行機のソフトウェア

日経エレクトロニクスの特集は「国産ジェット機が秘める効能」。エンジンや素材の話かと持ったら、半分以上はソフトウェア開発に関する話題だった。重工業などハードウェア系の会社では幹部の多くがハードウェア分野出身のため、ソフトウェアの重要性や必要性が認識されていないとのこと。この業界に限らず、良く聞く話だなぁ。100万行単位のソフトウェア開発を経験した人なんて上層部にはいないのだろう。

航空機のソフトウェアも欧米の安全基準に従うことになりそうだが、欧米の場合、環境ビジネスのように自分たちに都合の良い規格を「国際標準」として作り上げ、それをビジネスに持って行って儲けようとする例が多いように感じる。そもそも出発点が異なるのに、同じ土俵に載って同じ基準で評価されるのはかなり大変そうだ。規格を作った側が必ず有利だもんね。また、ソフトウェア開発技術についても、安全規格等の基準に準拠した開発ツールは欧米生まれのものが多く、国産のものは数が限られている。こんな状況では、ソフトウェア開発のルール作りで日本が主導権を取るのは難しそうだ。

記事にも載っているように、自動コード生成や形式手法(モデル検査)などの技術を積極的に活用する欧州と、手動によるコーディングが主流の米国との間で、日本の航空機産業はどのような方向を目指すのだろうか?人海戦術で安くソフトが作れると日本人は信じているから、オフショアへ開発を丸投げなんてことになるのかもしれない。でも、編集後記で触れられているように、中国では欧米の開発ツールを大量に購入しているらしい。ツール1本有れば簡単にできる作業をチマチマとやるのが日本人の得意技だが、オフショアではツールを使った効率的な開発など、既にソフトウェア開発の質的転換が始まっているようだ。質量ともに諸外国に見劣りする日本のソフトウェア産業の未来はあまり明るくないかも知れない。

それどころか「日本の航空宇宙産業の技術力は世界トップレベルである」と威勢のいい掛け声が目立つばかりで、冷静かつ具体的に自らのソフトウェア技術力を見つめる企業はごくわずかだ。「これだけソフトウェアの重要性に対する認識が遅れているのは、世界でも日本の航空宇宙産業くらいなのではないか」(東京大学の鈴木氏)。

日経エレクトロニクス2008年7月28日号〜国産ジェット機が秘める効能