無知なリーダーがもたらす災厄

隣のチームの仕事ぶりを知ると、自チームで当たり前に出来ていることが全然出来ていなかったり、或いはその逆のケースも有ったりして興味深い。ペアプログラミングなんて言う言葉があるけれど、チームリーダは隣のリーダと一緒に働いて互いの働き方から学ぶべきではないかと思ったりする。リーダーがペアでマネジメントを行えば、もう少しマトモになるチームも多いのではないだろうか。

以前に見たある開発チームでは、ソースコードのコミットの度にその旨を通知するメールをメンバー全員に手作業で送っていた。もちろん、手作業だから忘れることもあるし、必要な情報が欠落していたり、誤記が有ったりする。そんな面倒で、しかも不確実な作業をなぜ繰り返し行なっているのか担当者に聞いてみたら「それが決まりだから」という返事しか返ってこなかった。

ルールであることは分かっている。知りたいのは「何のためにそのようなルールがあり、メール送ることが何の役に立っているのか?」という点なのだが、そんな質問を投げても有益な返事は返ってこない。仕方なくチームリーダーに聞くと、以前にコミットの連絡が無かったために、修正箇所の入っていないシステムをリリースしてしまった事故があり、その対策として連絡を行うようになったとのこと。

これはこれで納得できる理由だ。それなら、次に知りたいのは、何故わざわざ手間のかかる手作業でメールを送っているのか、Subversionリポジトリのフックを使って、自動的にメールを送るようにシステムを用意すれば効率的だし確実ではないのか?という点なのだが、彼はそのような仕組みが技術的に可能であることをそもそも知らなかった。

無知というのは恐ろしい。ほんの少しばかりの好奇心を持って書籍を読んだり、ブログを読んだりして勉強していれば当然知っているはずのアタリマエの知識を知らなかったりする。しかもこの人はチームを取りまとめるリーダーという存在なのだ。効率の悪い作業方法をメンバに命じて、結果的に組織へ損失をもたらしているのに、その結果に気がついていないのだ。

残業してチマチマとメールを書き連ねているものの、何の価値も生み出さない仕事を命じられている担当者が気の毒になった。本人は一所懸命に働いているつもりかも知れないが、その責任の一旦は自らの学習を放置し、担当者が働いてさえいれば満足してしまうお粗末なリーダのマネジメントスキルにあると思う。

わたしが問題にしたいのは、捜し物をしている作業者は、一所懸命に働いていると自分で考えているだろう点だ。たしかに、彼らが仕事をさぼっているとは、誰も非難できない。捜し物が出てこなければ、製品は出荷できないのだから、必要な仕事でもある。だが、この捜し物の時間は、付加価値創造には何ら結びつかない時間なのだ。

「探し物」という名前の時間泥棒 : タイム・コンサルタントの日誌から