モデリングの考え方を学ぶ本「UMLモデリングの本質」
UMLの書き方を説明する本はたくさん有るけれど、そのモデリングの実践について書かれた本はそれほど多くない。開発現場では「書籍を参照すれば直ぐに分かる細かな記法」よりも「対象をそもそもどのようにモデリングするか?」という概念的な問題の方がずっと重要なのに、実践論を解説する参考書が少ないのは惜しいことだと思う。
そのような中で「UMLモデリングの本質」はモデリングの方法論を具体的かつ実践的に詳しく解説している本だ。対象をどのようにモデルへ落とし込み、より洗練させていくかという考え方がUMLの図面と共に示されているので、専門家の視点でモデリングを疑似体験することが可能だ。いわゆる業務系のシステムを対象に説明が行われているので、その分野の開発に携わっているのなら、「成功パターン」の考え方を取り込むことも容易ではないかと思う。
個人的には、UMLでの概念モデルだけに留まらず、その抽象的なモデルをいかに実装可能なモデルへ落とし込んでいくかという変換のプロセスが興味深かった。上手に実装されたソースコードでは、各クラスの役割が明確だったり、全体としてのアーキテクチャが明快なのですんなりと理解できることが多いが、そのソースコードを抽象化(リバース)すれば、おそらく美しくかつ合理的なモデルが再現できるのではないかと思う。分かりやすく変更に強いソースコードは、実は開発者の頭の中で暗黙のうちにモデリングを行った結果なのかも知れない。
UMLの書き方など基本的なことは一切説明されていないので、他の入門書で基礎を学んでから読む必要があるものの、説明も平易で分かりやすく良い書籍だと思う。
- 作者: 児玉公信
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2011/05/26
- メディア: 単行本
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